赤字の会社は経営管理ビザとれないの?

日本人になりたい! 入社3年目からの帰化申請

赤字決算でも経営管理ビザの申請がしたい!

日本で外国人がビジネスを始めたり、既存のビジネスを運営するときに経営ビザ申請を行います。しかし、赤字決算を出してしまった場合、経営ビザ申請に対する不安や疑問が生じるかもしれません。本記事では、赤字決算があっても経営管理ビザの申請が可能である理由と、その申請を成功させるためのポイントを解説します。

経営管理ビザの「事業の継続性」について

日本にある既存法人が新たに外国人の役員を就任させる場合、原則、入管へ経営管理ビザの申請を行い、経営管理ビザを取得する必要があります。経営管理ビザとは、”本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動”をする外国人に付与される在留資格です。申請を行う当該外国人が役員として経営に従事するのか、管理者として従事するのかをまずは明確にしておいてくださいね。参考までに、管理者とは部長や支店長又は出資をしていない所謂(いわゆる)雇われ社長をいいます。

さて、本題に入ります。
外国人が既存法人の役員に就任し、経営管理ビザの申請を行うに際して、「事業の継続性」が問題になることがあります。この「事業の継続性」について、その基準が不透明だとこれまで指摘されてきました。そこで、法務省では事業の継続性についてのガイドラインを示すこととなりました(令和2年6月現在)。

事業の継続性については、今後の事業活動が確実に行われると見込まれることが必要です。しかし、直近の決算だけをみると、事業活動の様々な要因で赤字決算となっていますことも十分に考えられます。そこで、直近の決算だけを重視するのではなく、貸借対照表等も含めて総合的に判断することが必要になることから、直近2年分の決算により次のとおり取り扱うこととされています。

それでは、事業の継続性について解説していきますのでチェックしてみてくださいね。

直近期または直近期前期において売上総利益がある場合

★直近期において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合
まず、直近期において剰余金がある場合には、事業の継続性は問題ありません。剰余金とは純資産から資本金と資本準備金を控除した金額です。簡単にいうと、利益がでている会社のため問題なしと判断されます。
次に剰余金も欠損金もない場合とは、たとえ直近期において赤字だったとしても、剰余金が減少したのみで欠損金とまでならない状態をいいます。欠損金とまでならないのであれば、事業を継続する上で重大な影響を及ぼすとまでは判断されません。

つまり、「直近期において剰余金がある場合」または「剰余金はないが欠損金もない場合」には、事業の継続性があると認められます。

直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合

売上総利益(粗利)がないとは、売上高が売上原価を下回る状態です。
この状態の場合、通常の企業活動を行っているものとは認められないものであり、故に事業の継続性があるとは認められません。

直近期において欠損金がある場合

★直近期において債務超過となっていない場合
これは、直近において赤字となったが、貸借では債務超過となっていない(負債が資産を上回っていない)状態のことです。
この状態であれば、原則、事業の継続性があると認められます。ただし、今後1年間の事業計画書や予想収益を示した資料の提出を求めることとされていますし、当該資料の内容によっては、中小企業診断士や公認会計士等の第三者が評価した書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出をさらに求める場合もあります。

(参考事例)出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」より
当該企業の直近期決算書によると、当期損失が発生しているものの、債務超過とはなっていない。また、同社については第1期の決算である事情にも鑑み、当該事業の継続性があると認められたもの。
【参考指標:粗利率約60%、営業利益率約-65%、自己資本比率約30%】

★直近期において債務超過であるが、直近期前期では債務超過となっていない場合
これは、直近期において赤字であり、かつ、債務超過となったが直近期前期では債務超過となっていない状態です。この状態の場合、事業の継続性を認め難いといえます。(債務超過となった場合、一般的には企業としての信用力が低下し、事業の存続が危ぶまれる状況であるため。)しかし、債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に具体的な改善(債務超過の状態でなくなることをいう。)の見通しがあることを前提として事業の継続性を認めることとします。

(参考事例)出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」より
当該企業の直近期決算書によると、売上総損失(売上高-売上原価)が発生していること、当期損失は赤字で欠損金もあり、また、欠損金の額は資本金の約2倍が発生していることから、当該事業の継続性が認められなかったもの。
【参考指標:粗利率約-30%、営業利益率約-1,000%超、自己資本比率約-100%】

★直近期及び直近期前期ともに債務超過である場合
これは、債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかった状態です。
この状態の場合、事業の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年間での十分な改善がなされていないことから、事業の継続性があるとは認められません。

まとめ

☑ 既存法人の経営管理ビザ申請では、直近2年分の決算書をみて事業の継続性を判断する
☑ 直近の決算で赤字の場合、債務超過となっていなければ、原則事業の継続性が認められる
☑ 直近の決算で赤字であり債務超過となった場合、債務超過が1年以上続いていない限り、事業の継続性が認められる可能性がある
☑ 直近2期ともに債務超過となった場合、事業の継続性は認められない