はじめての特定技能ビザ申請
特定技能ビザ(「特定技能1号」在留資格)とは、国内の人手不足を外国人で補うために設けられた就労ビザです。ただし、すべての会社が特定技能外国人を受け入れられるわけではありません。受入れが認められるのは、建設、介護、工業製品製造業など、国が定める人手不足の産業分野(特定産業分野)に該当する事業を行っている会社に限られます。
本記事では、はじめて特定技能外国人を雇用する会社向けに、会社がやるべきことをわかりやすく解説します。
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目次
特定技能ビザとは
特定技能ビザは、学歴不問で試験に合格すれば現場の即戦力として働くことができる就労ビザです。業種は以下の特定産業分野に限られます。
参考として、各分野では次のような仕事をすることができます。
- 介護・ビルクリーニング・工業製品製造業:身体介護、清掃、工業製品の製造・加工など
- 建設・造船・自動車整備:工事現場作業、溶接・塗装、点検整備など
- 農業・漁業・林業・木材:栽培管理、収穫、飼養管理、植林など
- 宿泊・外食:フロント接客、調理、店舗管理など
- 運輸・航空・鉄道:バス・タクシー・トラック運転、地上走行支援、整備など
また、特定技能ビザは人手不足を解消するため分野ごとに受け入れ人数を定めています。受入れ期間は令和6年度から10年度の5年間となっており、令和7年12月時点の主な産業分野の受入れ状況は次のとおりです。
| 分野 | 5年間の受入れ見込数 | 在留人数(令和7年12月) | |
|---|---|---|---|
| 1 | 飲食料品製造業 | 139,000人 | 93,393人 |
| 2 | 介護 | 135,000人 | 67,871人 |
| 3 | 工業製品製造業 | 319,200人 | 56,736人 |
| 4 | 建設 | 80,000人 | 49,323人 |
| 5 | 外食業 | 50,000人 | 43,869人 |
※なお、外食業分野については、令和8年4月13日以降、海外から新たに特定技能外国人を呼び寄せることができなくなっています。
はじめて特定技能ビザの外国人を雇用する会社がやるべきこと
申請手続きの全体像をつかむため、まずは特定技能外国人を受け入れる会社がやるべきことを簡単にご説明します。このあと、それぞれの手続きについて順番に詳しく解説していきます。
- 外国人が日本語試験と特定技能評価試験に合格しているか確認する
- 自社で支援を行うか、登録支援機関に委託するかを決める
- 分野別の基準を確認し、協議会に加入する
- 特定技能ビザの申請に必要な書類を準備する
- 外国人と雇用契約を締結し、母国語で事前ガイダンスを行う
- 特定技能ビザを申請する
外国人が日本語試験と特定技能評価試験に合格しているか確認する
ここで確認することは、外国人本人が必要な試験に合格しているかどうかです。
特定技能ビザは学歴不問で、特別な実務経験も必要ありません。外国人本人については、以下の試験に合格していることが主な条件となります。
| 試験区分 | 合格基準 |
|---|---|
| 日本語試験 | 日本語能力試験(JLPT)でN4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2以上の日本語能力試験に合格していること |
| 技能試験 | 分野ごとに実施される特定技能の技能評価試験に合格していること |
| 分野 | 試験名・業務区分 |
|---|---|
| 介護 | 介護技能評価試験 |
| ビルクリーニング | ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 |
| 工業製品製造業 | 製造分野特定技能1号評価試験(機械金属加工、電気電子機器組立て、金属表面処理 など) |
| 建設 | 建設分野特定技能1号評価試験(土木、建築、ライフライン・設備) |
| 造船・舶用工業 | 造船・舶用工業分野特定技能1号試験(溶接、塗装、鉄工、機械加工、電気機器組立て など) |
| 自動車整備 | 自動車整備分野特定技能評価試験 |
| 航空 | 航空分野特定技能1号評価試験(空港グランドハンドリング、航空機整備) |
| 宿泊 | 宿泊業技能測定試験 |
| 自動車運送業 | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック運送業、タクシー運送業、バス運送業) |
| 鉄道 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、運輸係員、駅係員、運転士 など) |
| 農業 | 農業技能測定試験(耕種農業、畜産農業) |
| 漁業 | 漁業技能測定試験(漁業、養殖業) |
| 飲食料品製造業 | 飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験 |
| 外食業 | 外食業特定技能1号技能測定試験 |
| 林業 | 林業技能測定試験 |
| 木材産業 | 木材産業特定技能1号技能測定試験 |
※注意:分野によっては、業務区分ごとに技能試験が設けられています。受験する試験は従事する業務内容によって異なるため、事前に対象となる業務区分を確認してください。
自社で支援を行うか、登録支援機関に委託するかを決める
特定技能ビザの外国人を雇用するには、支援体制が最重要キーワードです。支援体制を自社で行うか、登録支援機関に委託して行うのかを最初に決めます。まずは、以下のフローチャートをご確認ください。

解説
自社支援の要件を満たさない場合や、自社での対応が難しい場合は、登録支援機関に支援を委託することができます。登録支援機関に委託した場合、受入れ会社が支援責任者・支援担当者を選任したり、10項目の支援を自社で行ったりする必要はありません。一方、自社支援を行う場合は、支援責任者・支援担当者を選任し、10項目の支援を自社で行います。
なお、支援責任者と支援担当者は兼務することができます。そのため、社内で1人が両方を担当することも可能です。ただし、特定技能外国人に対して中立的な立場であることが条件です。中立的な立場の具体例は、下記の組織図をご確認ください。
支援10項目の内容
| 支援項目 | 支援内容 |
|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 雇用条件、入国手続、日本での生活などを事前に説明 |
| ② 入出国時の送迎 | 入国時の空港から住居・職場まで、帰国時の空港まで送迎 |
| ③ 住居・生活契約の支援 | 住居確保、銀行口座・携帯電話・ライフライン契約を支援 |
| ④ 生活オリエンテーション | 日本のルール・マナー、公共機関、災害時の対応などを説明 |
| ⑤ 公的手続の同行 | 住民登録、社会保険、税金などの行政手続をサポート |
| ⑥ 日本語学習の支援 | 日本語教室や教材などの学習情報を提供 |
| ⑦ 相談・苦情への対応 | 仕事や生活の相談・苦情に、理解できる言語で対応 |
| ⑧ 日本人との交流促進 | 地域行事や自治会活動などへの参加を案内 |
| ⑨ 転職支援 | 会社都合で離職する場合、転職活動や行政手続を支援 |
| ⑩ 定期面談・通報 | 3か月に1回以上面談し、法令違反などは行政機関へ通報 |
「中立的な立場」の組織図

※上記は総務部を例にしていますが、営業部など、特定技能外国人が所属する部署以外の部署でも問題ありません。会社の組織体制によって部署は異なりますが、特定技能外国人が所属する部署以外の社員が支援責任者・支援担当者になると考えてください。
分野別の基準を確認し、協議会に加入する
特定技能ビザの申請は、いきなり入管へ申請するわけではありません。まず、各分野を所管する省庁が定める基準を満たしているかを確認し、分野別の協議会に加入してから入管へ特定技能ビザの申請を行います(下図参照)

分野別の協議会一覧
| 分野 | 協議会・機関名 | 所管省庁 | 費用 |
|---|---|---|---|
| 介護 | 公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS) | 厚生労働省 | 無料 |
| ビルクリーニング | ビルクリーニング分野特定技能協議会 | 厚生労働省 | 無料 |
| 工業製品製造業 | 一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM) | 経済産業省 | 無料 |
| 建設 | 一般社団法人建設技能人材機構(JAC) | 国土交通省 | 有料 |
| 造船・舶用工業 | 造船・舶用工業分野特定技能協議会 | 国土交通省 | 無料 |
| 航空 | 航空分野特定技能協議会 | 国土交通省 | 無料 |
| 宿泊 | 宿泊分野特定技能協議会 | 観光庁(国土交通省) | 無料 |
| 自動車運送業 | 自動車運送業分野特定技能協議会 | 国土交通省 | 無料 |
| 鉄道 | 鉄道分野特定技能協議会 | 国土交通省 | 無料 |
| 鉄道 | 鉄道分野特定技能協議会 | 国土交通省 | 無料 |
| 農業 | 農業特定技能協議会 | 農林水産省(農産局) | 無料 |
| 漁業 | 漁業分野特定技能協議会 | 農林水産省(水産庁) | 無料 |
| 飲食料品製造業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 | 無料 |
| 外食業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 | 無料 |
| 林業 | 林業特定技能・育成就労協議会 | 農林水産省(林野庁) | 無料 |
| 木材産業 | 木材産業特定技能・育成就労協議会 | 農林水産省(林野庁) | 無料 |
解説
介護分野を例にすると、まずは厚生労働省が定める受入れ基準を確認します。主な基準として、受入れ対象となる施設であること、特定技能外国人を直接雇用すること、訪問介護業務に従事させる場合は一定期間、責任者等が同行する体制を整えることなどが挙げられます。これらの基準を満たしていることを確認した後、特定技能外国人を受け入れる場合は、ビザ申請前に公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)への入会申請を行います。入会証明書の発行を受けた後、出入国在留管理庁へ特定技能ビザの申請を行います。
特定技能ビザの申請に必要な書類を準備する
特定技能ビザの申請に必要な書類は、次のとおりです。
一見すると書類が多く、準備が大変そうに感じるかもしれません。しかし、外国人本人が必要な試験に合格しており、支援体制や分野別の基準を満たし、適切な労働条件を整えていれば、必要書類の準備が特別難しいわけではありません。
| ① 外国人本人に関する書類 |
|---|
|
| ② 受入れ会社に関する書類 |
|---|
|
外国人と雇用契約を締結し、母国語で事前ガイダンスを行う
特定技能ビザでは、ビザ申請前に外国人と雇用契約を締結します。
「ビザが許可される前に雇用契約を締結するの?」と疑問に思うかもしれませんが、ビザの申請はこの順番で行います。なお、不許可となった場合は雇用できないことをあらかじめ説明し、その旨を雇用契約書に記載しておくとよいでしょう。
また、特定技能1号では、雇用条件や日本での生活などについて、外国人が十分に理解できる言語で事前ガイダンスを行う必要があります。
登録支援機関に支援を委託する場合は、外国語での対応も含めて支援を任せることができます。自社支援を行う場合で社内に対応できる人がいないときは、通訳会社などと連携して対応します。
特定技能ビザ申請をする
ここまで見てきたように、特定技能ビザの申請は、まず外国人本人と受入れ会社の要件を確認します。そのうえで、分野別の協議会に加入し、雇用契約を締結した後、事前ガイダンスを行い、特定技能ビザを申請するという流れで進めます。
ここで、手続き全体の流れを整理しておきます。
手続き全体の流れ
- 採用する外国人が日本語試験と技能試験に合格しているか確認する
- 自社で支援を行うか、登録支援機関に委託するかを決める
- 自社支援の場合は、支援責任者・支援担当者を選任し、10項目の支援体制を整える
- 分野別の基準を確認し、必要な協議会に加入する
- 特定技能ビザの申請に必要な書類を準備する
- 外国人と雇用契約を締結し、十分に理解できる言語で事前ガイダンスを行う
- 特定技能ビザを申請する(在留資格変更許可申請または在留資格認定証明書交付申請)
- 特定技能ビザを取得し、就労を開始する
二国間取決めの対象国には注意
外国人本人の国籍によっては、日本とその国との間で締結された二国間取決め(協力覚書)に基づき、入管へのビザ申請とは別に、本国側の手続きが必要になる場合があります。
たとえば、国内にいるベトナム人を特定技能で受け入れる場合、入管への申請前に、駐日ベトナム大使館へ推薦者表(特定技能外国人表)の発行を申請し、承認・発行を受ける必要があります。ビザ申請の際には、この推薦者表を添付します。
このように、外国人を受け入れる際は、国籍によって追加の手続きが必要かどうかをあらかじめ確認しておきましょう。
二国間取決めの対象国は、以下のとおりです。
カンボジア、インドネシア、ネパール、フィリピン、ミャンマー、タイ、ベトナム、モンゴル、ウズベキスタン、スリランカ、インド、バングラデシュ、パキスタン、ラオス、キルギス
Q&A
登録支援機関とは何ですか?
登録支援機関とは、特定技能1号の外国人に対する支援業務を、受入れ会社から委託を受けて行う機関です。
出入国在留管理庁のホームページでは、登録支援機関の一覧を確認できます。登録支援機関への委託を検討している場合は、一覧から近くの機関を探して相談してみるとよいでしょう。
登録支援機関への委託は必要ですか?
必須ではありません。自社で必要な支援体制を整えられる場合は、自社で支援を行うこともできます。
一方で、自社での支援が難しい場合は、登録支援機関に委託することができます。費用は登録支援機関によって異なりますが、特定技能外国人1人あたり月額3万円前後が目安とされることがあります。
登録支援機関への委託から、自社支援に切り替えることはできますか?
登録支援機関との契約を終了し、自社支援に切り替えることも可能です。契約終了後14日以内に必要な届出を行い、支援計画書などを提出する必要があります。
分野別協議会とは何ですか?
分野別協議会とは、特定産業分野ごとに設置され、分野ごとのルールや特定技能外国人の受入れ状況などを確認するための協議会です。
特定技能外国人を受け入れる場合は、分野ごとに定められた協議会への加入が必要です。
分野によっては、加入手続きに3か月程度かかることもあります。その後のビザ申請にも影響するため、特定技能外国人の受入れを決めたら、早めに加入手続きを進めておくとよいでしょう。
技能実習から特定技能ビザへ変更できますか?
できます。技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能評価試験と日本語試験が免除されます。そのため、技能実習から特定技能へ在留資格を変更して、引き続き日本で働くことが可能です。また、現在の在留期限までに間に合わない場合、「特定活動(6か月・就労可)」への変更申請を行える場合があります。
特定技能1号と2号の違い|今後のキャリアを見据えて
特定技能1号は、通算で最長5年間の在留が可能です。5年を超えて日本で働く場合は、特定技能2号や別の在留資格への変更が必要になります。
特定技能2号は、分野ごとに定められた技能試験や実務経験などの要件を満たすことで取得できます。1号と異なり、在留期間に上限がなく、要件を満たせば家族帯同も可能です。また、特定技能1号では必要な支援計画も、2号では必要ありません。
なお、特定技能1号の在留期間は、原則として永住許可に必要な在留期間に算入されません。一方、特定技能2号の在留期間は算入されます。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 技能水準 | 特定産業分野で業務を行うために必要な相当程度の知識または経験を有する技能が必要 | 特定産業分野において熟練した技能が必要 |
| 対象分野 | 特定技能1号の対象となる特定産業分野 | 特定技能2号の対象となる特定産業分野 |
| 取得方法 | 技能試験・日本語試験などの要件を満たすことで取得 | 原則として特定技能1号で実務経験を積み、特定技能2号評価試験合格などの要件を満たすことで取得 |
| 在留期間 | 通算で最長5年まで | 更新により上限なく在留可能 |
| 支援計画 | 受入れ機関による「1号特定技能外国人支援計画」の作成・実施が必要 | 支援計画の作成・実施は不要 |
| 家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば配偶者・子の帯同が可能 |
| 永住許可 | 原則として特定技能1号の在留期間は永住許可申請に必要な在留期間として算入されない | 永住許可申請に必要な在留期間として算入されます |
※特定技能1号から2号へ移行できるかどうかは、分野によって異なります。長期的な雇用を考える場合は、受入れ予定の分野が2号への移行に対応しているかを確認しておきましょう。
先生のひとこと
人手不足が深刻になるなか、特定技能外国人を雇用する会社は今後も増えていくと考えられます。
特定技能ビザの申請は、外国人本人の要件、受入れ会社の要件、分野ごとのルール、支援体制など、複数の確認事項があります。はじめて特定技能外国人を受け入れる会社は、採用を決めてから準備を始めるのではなく、採用前の段階から必要な手続きを確認しておくと安心です。
「自社で受け入れられるのかわからない」「自社支援と登録支援機関への委託のどちらがよいかわからない」といった場合は、早めに専門家へ相談し、自社の状況に合った受入れ方法を検討しましょう。
この記事の監修者
代表行政書士
山 中 健 司
Kenji Yamanaka- 所属団体:日本行政書士会連合会、大阪府行政書士会
- 登録番号:第11261315号
- 登録資格:特定行政書士/申請取次行政書士
-
大阪出身。在留資格や帰化申請、化粧品・医薬部外品許可申請などを中心にサポート。依頼者との出会いを大切にし、「出会えてよかった」と思ってもらえる関係づくりを大事にしています
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